No.130 【 いい子症候群の若者たち 】
2022.04.13
『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』著者の金間大介氏は金沢大学の教授・東京大学で客員教授を務める方。イノベーションを狙っての若者のモチベーション(動機づけ)の研究者で、日々の大学生と接しての体験と調査データに基づいてこの本を書かれている。
◆「素直でいい子、まじめでいい子」
著者の最近の若者観を一言で言えばこれである。そして、最近の若者の行動原則を次のようにまとめている。
- 1)周りと仲良くでき、協調性がある
- 2)一見、さわやかで若者らしさがある
- 3)学校や職場では横並びが基本
- 4)5人で順番を決める時は3番か4番目を狙う
- 5)言われたことはやるけど、それ以上のことはやらない
- 6)人の意見はよく聞くけど、自分の意見は言わない
- 7)悪い報告はギリギリまでしない
- 8)質問しない
- 9)タテのつながりを怖がり、ヨコの空気を大事にする
- 10)授業や会議では後方で気配を消し、集団と化す
- 11)オンラインでも気配を消し、集団と化す
- 12)自分を含むグループ全体に対する問いかけには反応しない
- 13)ルールには従う
- 14)一番嫌いな役割はリーダー
- 15)自己肯定感が低い
- 16)競争が嫌い
- 17)特にやりたいことはない
さて、あなたの周囲の若手の社員さんは、この行動特性にどのくらいあてはまるだろうか?
仕事を通じて、若手社員と接することが多い小生の実体験からは、「同感!」と感じる項目が多いと共に、「ここまで?!」とショックを受けた。
しかも、これらは、データの裏付けと大学生と日々接している金間氏の体験で述べられているから、説得力をもって今どきの若者の実態を訴えてくる。
◆今の大学生に聞いた「どれが最も公正な分配だと思いますか?」
この本で最初にショックを受けたのが、この調査結果である。
- ①平等分配 (年齢・能力などに関係なく完全一律な分配)
:男性49.0%、女性53.2%
- ②必要性分配(個人の必要性に応じて分配量を変化 ex扶養家族手当など)
:男性9.8%、女性9.1%
- ③実績に応じた分配(いわゆる成果主義に代表される分配)
:男性19.6%、女性16.5%
- ④努力に応じた分配(個人の努力量に応じた分配)
:男性25.5%、女性24.8%
*データは2018年〜2020年のもの
金間氏はこのデータ他を引用しながら、若者の傾向を次のように分析している。
・競争が嫌いで横並び意識が強い。
・競争的要素が発生した時点で、そこには近づこうとしない。
・仮に競争が発生しても絶対に全力を出さない。周りを見て平均点を取りに行くだけ。
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厳しい企業間競争の中、プロとして働くことが求められる中、競争を嫌う若者たちを一人前に育てていくのは至難の業である。
その他にも
・義務や責任を果たすより、権利を先に主張する
・打たれ弱く、なにかあると、すぐハラスメントだと主張する
こうした意識や行動特性を持っている若者をプロ企業人に育てていくのは、上司や教育担当、
受難の時代と言っていいだろう。
はてさて、今年の新入社員クラスの皆さんの意識と行動傾向は実際どうだろうか?
ドキドキ、ワクワクしている。クラスの様子は、この徒然草で、またお伝えする予定である。
以上