No.29【荻生徂徠に学ぶ~人の上にたつ者の心得】
2019.02.20
荻生徂徠(おぎゅうそらい)は、
江戸時代 8代将軍 徳川吉宗に仕えた儒教家で、
日本の経営学の祖とも言われる。
彼が残した教えの一つに【荻生徂徠の九訓】がある。
人の上にたつ者の心得を示したもので、現代でもそのまま通用する教えと感じる。
【荻生徂徠の九訓】
一、人の長所を初めより知らんと求むべからず、
人を用いて初めて長所の現わるるものなり。
(訳)人の長所を初めから知ろうとしてはいけない。
人と一緒に仕事をして、使ってみて初めて長所が
現れるものである。
二、人はその長所のみを取らば、すなわち可なり。
短所を知るは要せず。
(訳)人はその長所のみをとればよい。短所を知る必要はない。
長所だけ見ることはとても大切なことだ。
*(筆者)一、二について
我々は、ともすると、先入観で人を評価したり、
人の短所にフォーカスしがち。
人を育てることが上手な人は、「美点凝視」を行っている。
三、おのれが好みに合う者のみを用うるなかれ。
(訳)自分の好みに合う者だけを採用、登用するな。
自分に注意してくれる人、違った見方をしてくれる人は
とっても重要な人物になるだろう。
*(筆者)「リーダーは諫言(過失などをいさめる発言)してくれる側近を持て」
とも言われるとおり。
四、小過をとがむるなかれ。ただ事を大切になさば可なり。
(訳)小さい過ちをとがめる必要はない。ただ仕事を大切にすればよいのだ。
五、用うる上は信頼し、十分にゆだねるべし。
(訳)人を用いる上で、人を信頼して、その仕事を十分に委せよ。
六、上にある者、下にある者と才知を争う事なかれ。
(訳)上にある者は、下の者と才智を争ってはいけない。
*(筆者)鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの墓石に刻まれた
『己より優れた者を周りに集めた者、ここに眠る』
もこれに通じる教えだと思う。
七、人材は必ず一癖あるものと知るべし。
ただし、その癖は器材なるがゆえに、癖を捨てるべからず。
(訳)人は必ず一癖あるものである。
それはその人が特徴のある器であるからである。
癖を捨ててはいけない。
癖は特徴で良い。ずば抜けたところにもなるからである。
八、かくして、上手に人を用うれば事に適し、
時に応ずる人物、必ずこれにあり。
(訳)以上に着眼して、良く用いれば、事に適し、
時に応じる程の人物は必ずいるものである。
九、小事を気にせず、流れる雲のごとし。
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如何だろうか?
人材育成に関わる小生も、
心に留め置かないとならない至言と思う。