No.150【 明珠在掌 】
2022.10.12
◆Aさんの不満
クラスに参加して下さったAさん。飲食店の新規出店の店長を任されるタイミングで受講下さった。
途中で彼から相談を受けた。
「私、上司に認められていないんです。それに・・・・・。」と次々に不満が出てきた。
最後まで話を聞き、Aさんに質問した。
「Aさん、今度のあなたの新規出店にいくらのお金が投資されていますか?スタッフは何人ですか?」
都心部の中型店の出店だけに、数千万円の投資。スタッフは、正社員だけで4名とのこと。
「Aさん、認めていない部下に、数千万円の投資案件を任せ、4名の正社員さんを任せると思いますか?
それに、認めていない人に時間も費用も使って、今回の受講をさせると思いますか?
そのことが、既にあなたが認められている一番の証じゃないですか?」
Aさんは、しばらく黙り込んだ。
◆「明珠在掌」
禅の言葉で、「明珠在掌」(みょうじゅたなごころにあり)という言葉がある。
「明珠」とは、大変価値のある宝物のこと。それは、「在掌」、既に手のひらの中に握っている。
という意味。
我々は、時に、「今ここ」のあるものに目を向けず、感謝せず、どこか遠くにあるものに目を向けて、幸せを求めてしまう。
先のAさんも、「今ここ」の事実に目を向けないで、不満の要因を自分で引き寄せている。
童話「青い鳥」。幸せの青い鳥を探して旅にでたチルチルとミチルも旅の末に幸せは身近なところにあったと気づくお話。
作家の曽野綾子さんは「ないものを数えず、あるものを数えて生きていく」本を書かれている。
あなたの手のひらにある身近な幸せを数えてみては如何だろうか?
命があること、仕事があること、家族があること、毎日食事が食べられること・・・。
日常の何気ない、あたりまえのことの中に幸せは既にある。
道元禅師は、「極楽は眉毛の上のつるしもの あまり近さに見つけざりけり」ともおっしゃっている。
以上