No.126 【 正射必中~ゴディバ ジャパンの理念と実践のプロセス~ 】
2022.03.09
◆成長するゴディバ・ジャパン
今年もバレンタインデーの一ヶ月余り前から、あちこちで「チョコレート商戦」が繰り広げられた。
業界で抜群の知名度と安定したお客様の支持を集める企業の一つが「ゴディバ」。
同社は この7年間で売上を3倍に伸ばした。
1年あたりの成長率で言うと15%増にあたる驚異の成長率である。
以前、同社の CEO/代表取締役社長の ジェローム・シュシャン氏が、NHKの番組の
取材に次のような話を語っていた。
◆ゴディバのミッションは、「お客さまにハピネスを届ける」です。
もう少し、具体的に言うと、記憶に残る幸せな瞬間(とき)を届けるということです。
ミッションを持つことはとても重要で、これが我われ社員にとってのモチベーションになり、
おかげさまでこの7年で売上が3倍に伸びました。
私のビジネスの考え方は、来日してから30年間続けている弓道に影響を受けています。
弓道には「正射必中(せいしゃひっちゅう)」という言葉があります。
これは、「正しく射れば必ず当たる」という意味で、
「的に当てることではなく、正しく射ることに集中する」。
そうすれば必ず結果が付いてくるという考え方です。
これがビジネスにおいても当てはまると考えています。
私たちは、常に売上や目標ばかりを気にしがちですが、まずは正しいことに集中する。
そうすれば、自然と結果が付いてくるのです。
◆ゴディバにとっての「正射」とは何か?
それは、「商品」「チャネル」「接客」「広告」の4つです。
これらの基本をしっかり行えば、売上がついてくると考えています。
とは言え、それを実現するのは、簡単なことではありません。
そこで大事なのは、いきなり高い目標を達成しようと考えないこと。
弓道で矢を射るとき、的に向かって必ず当てなければいけないと気負ってしまうと、
変なプレッシャーがかかって的に当たりません。これはビジネスも同じです。
ゴディバはこの7年間で売上3倍を達成、1年あたりの成長率で言うと15%増にあたります。
ただし、私が社内に掲げていた毎年の売上目標は、2~3%増でした。
それに向けてチームで良い商品、良いキャンペーン、接客サービスでベストを出したからこそ
良い結果が生まれたのだと思います。
もし最初から15%を目標にしていたら、始める前に諦めてしまって、
この結果は出ていなかったかもしれません。・・・・以下 略
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◆理念・ミッションが具体的プロセスに落とし込まれているか?
多くの企業で、語感のいい立派な文言で、経営理念やミッションが掲げられている。
しかし、ともすると、日々現場で行われていることや、第一線社員の行動は、
理念・ミッションとは連動していない、単なる売上をあげること等、結果を問う言動だけが
横行しているケースを多く見てきた。
トップもリーダー層も、理念・ミッションのことを日頃話題にすることはほとんどなく、
「売上は?」「利益は?」「客数の伸びは?」「生産性は?」と
結果に終止した話題ばかりが社内で行き交う。それが、社内コミュニケーションのほとんどになっていたりする。
これでは、社員が、「理念・ミッション」を意識した価値提供をお客様にできるはずがない。
こうして、理念は「絵に描いた餅化」する。
◆正しいプロセスは、正しい結果を生む。プロセスにこそ目を向けよ。
これは、トヨタの思考法の一つである。
あのイチロー選手も次々に大記録を達成している時期に、
「ヒットが何本打てたか」に一喜一憂しないで、「どんなスイング・プレーができたか」を
自問自省し続けたと言う。
いずれも、ゴディバのシュシャン氏の「正射必中」と同様の本質であろう。
人生もまた同じ。
「自分なりの使命感(ミッション)を持ち、結果に一喜一憂することなく、
今できることに集中し、誠実に、愚直に、素直に、足元の実践に徹底する」
経営にも人生にも、手抜きの安直な成功法などない。
【追記】
プーチンのクリミア侵略は、「正射必中」とは真逆の蛮行である。
クリミアの人々の安全と平和の回帰を祈る。
以上