No.115【 トップがエースで四番の会社は強くならない 】
2021.11.24
このところ、私の周囲の複数の企業で、幹部や現場リーダーとして期待されていた人が退社したり、
鬱の症状が出て、休職するなどのケースが多く見られる。
また、業界で注目されるほど、成長してきたのに、ある時期から伸び悩むといったケースも出てきている。
「ピンチの時ほど、その人やその組織の真の力が表れる」
と古来言われてきた。
今は、「100年に一度の大変革期」そこに、この2年のコロナ禍の状況。
バブル崩壊後の数年、リーマンショックの時を振り返っても、それまで顕在化しなかった本質的な問題が冒頭のケースのように表れた事例が多い。
まさに、「ピンチの時ほど・・・」の言葉どおりである。
そうなる本質的要因は、企業の風土(体質)、さらには、やトップリーダーのありようと言える。
そこで、ピンチや大きな変化の時に、企業の問題点が一気に表れやすい企業のトップリーダーの特性をまとめてみた。
- ◆社長に頻繁に電話がかかり、自ら対応している。
大事な打ち合わせやお客様との面談中でも「ちょっとすみません」と言って電話にでる。
私のコンサルティングの間に電話に出るケースでは、交信の雰囲気から察するに、超緊急トラブルと言うよりは、「社長に電話した方が早いから」、「社長に言わないと安心できないから」といった取引先、お客様からの電話がほとんど。
これは、
・社員への権限移譲がされていない。主要顧客への対応は、社長自ら行っている。
・任せられるだけの管理者が育っていない
・OJTで管理職、リーダーを育ててこなかったツケ
などの原因がほとんどである。
- ◆組織はあっても社員は直属の上司でなく、社長の顔を見て仕事している。
- 直属の上司の指示や意向よりも、激しい性格の社長を恐れ、その顔色を見て仕事している雰囲気が職場で感じられる。
トラブル対応も結局は、社長が出て対応するから、社員も自分の役割・責務を果たす厳しさや強さが身についておらず、最後は社長がなんとかしてくれるといった甘えがある。
組織図はあっても、本当は、トップ1人、あとは、社員が横一線といった組織の実態になっている。
- ◆社長の価値観を社員に押しつける。
- 仕事観や人生観など、個人に考えさせ、気づいてもらいながら、じっくり育てるのが望ましい価値観に関することでも、「こうじゃないと幸せにならない」といった感じで、社長の価値観を社員に押しつける、強要するような雰囲気がある。
中には、「我社の目的は、私が社員を幸せにすること」といった社長もいた。
思わず、私は「あなたは神さまですか?」と言ってしまったのだが・・・(汗)。
「社員が自ら幸せになりやすい環境はつくれますが、幸せ感は個人それぞれのものじゃないんですか?」とフォローしたが、自分の考え方に固執するその社長には、どうも伝わらなかった・・・。
◆業務の大きな変更、会社の仕組みやルールの変更など、重要なことでも社員が理解・納得するような説明をしない。(しかも、そんなことが日常的にある)
ある社長は、一存で、ショールームだけでなく、職場や休憩スペースを録画できる設備を取り付けようとし、いきなり業者がきたケースもある。
また、予定になかった大きなイベントの開催を決めてきて、社員になんとかしろ、と言う。
そんなことが度々あった。
社長の気分や直感で決め、「なんのために?なぜ?」の説明はほとんどしない。
こんな状態が続くと、「言われたことを大人しくやっていたらいいや」「下手な提案なんかしない方がいい」とワンマン社長の下に、指示待ち社員ばかりの風土ができあがる。
◆朝礼や会議などの社長話が長い。
勉強会や異業種交流、自分が見聞したことをさも、自分の考えのように、延々と話す。
社員からすると、なかば、お説教のようなものになっている。
話していて気分のいいのは、自分の話に酔っている社長だけ。
社員は、またご高説が始まった、と「お昼に何食べようか?」みたいなことを考えながら、心ここにあらず状態で、おとなしく辛抱して聞いている。
◆社長が現場で働く社員の実態、心をよくわかっていない。現場から社長の心が離れている。
現場で働く人の心を感じないままの話は、単なる理想論、絵に描いたモチ。社員の心に届かない。
日々、現場でコツコツ汗して働く社員に感謝の心を忘れず、語るリーダーの言葉は、心に響くけれども。
◆いつまでも、エースで四番じゃ・・・。
こうした特性をあげてみると、要するに、口では「社員が大事」と言いながら、本当は、自分のエゴの具現化や「自分が目立ち、スポットライトを浴びること」が一番大事なのがリーダーの心が垣間見える。
「エースで四番は、このオレだ」に自己承認の快感を求めていると思わざるを得ない。
こんな会社(チーム)が強くなるはずはない。
結局、「○○(社長の個人名)商店」で終わる。公器にはなれず、家業の延長の会社までにしかなれない。
「主役は社員。自分は、舞台監督、脚本家。」「演技への称賛は、どうぞ、社員に。」と考える社長のもとで社員は育ち、会社は、公器として強くなる。
以上