No.107【 “ごめんなさい”を言える勇気 】
2021.09.29
◆経営者からよく聞かれる質問の一つ
中小企業の経営者や中堅以上の人事や教育担当者からご質問頂くもので多い一つが、「入社後に成長する人・しない人」の特性である。
特に昨今は、厳しい環境下の中、新卒や中途採用などで、いい人材と思って採用したものの入社後そうでもなかったケースがままあるようで、厳選して採用する際、人を見抜くのに苦労されている背景がある様子。
そんな時、私は次のようにお答えする。
「“素直な人、ごめんなさい”を言える人、“心のこもった「ありがとう」を言える人“は、伸びる可能性が高いですよ。
学歴が良くても、これがない人は、伸びないケースが多いです。
“素直な人、ごめんなさい”を言える人は、たとえ入社時に、専門的な知識が足りなくても誠実に努力して勉強しますし、周囲の人からの応援も受けてその後成長していきます。
しかし、頭でっかちで、素直さがない人は、時に評論家的な言動で人を非難したりして、かえって組織にはマイナスになる人も多く見てきました。」
30年余、人間力を扱う訓練・研修を担当してきて、つくづくそう実感する。
◆この1ヶ月の早矢仕塾の気づきのレポートのやり取り
今年度で第5クールになる早矢仕塾では、終わったあと、毎回気づきのレポートを出してもらう。
内容は、
1)その回の学びの要約
2)自分を振り返っての反省や気づき
3)次回まで職場で行う具体的実践決意
といったもの。
コロナ禍の前までは、塾開催日以外でも、塾生が自主的に集まり、互いの現場実践を交流するミーティング、会社見学、食事会を開いて本音が話し合える関係に近づけるようにする、などの機会で継続的に刺激しあい、お互いの気づきを深めてきた。
しかし、コロナ禍の今、そうした機会が持てない状況が続くため、春先からの第1回・第2回の学びが途切れてしまいそうな気がして、約1ヶ月前の8月半ば頃、塾生に補講のメールを送った。
要旨は、「コロナの影響で・・・」を言い訳にせず、今の環境だからできることに目をむけ実践しよう、塾の本質は日常の現場での実践で成果を出すことであり、自分磨きであり、リーダーとして恥ずかしくない後ろ姿を日々メンバーに見せ続けることを忘れないように、といった内容である。
◆レポートに現れた成長しない人の特徴
この補講レポートを読んで、「自分を振り返っての反省や気づき、そして具体的実践決意」を各自提出してもらうことにした。
そのレポートにも、前述の「成長する人・しない人」の特徴が如実に現れた。
成長しない人のレポート文面の特徴は
1)文章が長い。
多くが、やれない(本当は「やらない・やりたくない」)ことの理由(言い訳)を書き、正当化しようとしている。本音をかくし、体裁よくきれいな言葉を並べて、カモフラージュする。従って文章は長くなる。
2)提出が締め切りギリギリか、数日遅れる。
内容の良い人ほど、提出が早く、遅い人ほど中身がない。
3)「反省や気づき」が、一般論やこれまで学んだことを単に整理しているだけ。評論家的な内容や理屈が多く「自分は・・・」の振り返りがない。上っ面を書き、自分の内面のことには言及しない。
「〜だから、できない」のニュアンスのフレーズが多く、コロナの環境や上司・部下のせいなど、「他責」で「自責」には目を向けていない。
4)従って、本当は「自分が逃げている、サボっている・・・」などの自分の弱さやずるさには、目を向けていない(内省しない)。
5)根底に「感謝の心」がない。
直属の上司、正副塾長も本来の業務がある中、レポートへの助言や指導を何度かして下さったり、講師の藤村や私のフィードバックに対しても、お礼や感謝の心を感じる文言がない。
つまり、自分の成長のために提出しているのではなく、「指示だから」「義務」だから、出している感じ。
塾への参加も、本人が成長したいと思って参加しているのか?に疑問符がつくような感じがする。
など。
これらの特徴は、日常の仕事に置き換えても、伸びない人(仕事ができない人)の特徴そのものと思い当たる読者も多いのではないだろうか?
再提出が3〜4回に及んだ人もいた。最も遅い人が終わったのは、1ヶ月後の最近である。
何度も提出したりして、合格が遅くなった人の理由は何か?
はっきりしている。
自分の弱さやサボっていることに、素直に目を向け、受け入れたか否か?である。
簡潔にいうなら、冒頭に述べた、
「“素直な人、ごめんなさい”を言える人、“心のこもった「ありがとう」を言
える人“」でない人、ということ。
◆「ごめんなさい」を言える人は強い人。
「ごめんなさい」「改めます」と言える人は、成長する。
「自分の弱さと向き合いを開示できる強さ」があるからである。
また「素直さ」は、人としての「かわいげ(可愛げ)」を感じさせ、上司や関係する人は「もっとアドバイスをしてあげよう」「応援してあげよう」と支援したくなる。
素直に受け入れない人には「言っても改めないのなら・・・」とそのうち熱意がさめ、相手にしたくなくなる。
- 「自分の非や過ちを受け入れる・認めること」は、大きな勇気がいる。
一旦、自己否定することだからである。
人には、承認欲求があり、自己防衛本能がある。だから、マイナスや過ちの指摘をされると
「言い訳」や正当化をしたくなる感情の回路が発生するのが自然である。
◆「過ちて改めざる、是れを過ちという」 孔子
「ごめんなさい」は、「改めます」と宣言する言葉。
人は過ちを犯す。問題はその時の対処。そこにその人柄が表れる。
自分の未熟さを忘れず、非や弱さを受け入れる素直さ、勇気と度量を持ち続けたいものである。
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名月を愛でながらの散歩道。
「そう言いながら、オマエも連れあいに、なかなか“ごめんなさい”って言えないことが、まあまああるよな~。」
と月明かりに照らし出された自分の影にむかってつぶやいた。
以上