コラム『DMP徒然草』 書籍情報のご案内
DMP徒然草

No.12【日常の中に楽しみを発見する】

2018.10.17

◆『たのしみは日常の中にあり』

   ~『独楽吟』に学ぶ心の技法~ 

                

『独楽吟』橘 曙覧【歌】 武田鏡村【解説】:東洋経済新報社

ある人の紹介で15年ほど前にこの本に出会った。

『独楽吟(どくらくぎん)』とは

「独り(ひとり)楽しめる吟(うた)」との意味で 

幕末の歌人、橘 曙覧(たちばなのあけみ)の短歌集。

 

いずれも、なにげない日常生活の中から

積極的な楽しみを発見した歌になっている。

武田氏の味わい深い解説も手伝って、

心にすっと染みこみ静かな感動が広がっていく。

小生も枕元において、時々、就寝前のひととき、

何気なくひらいたページを読むことにしている。

この本の「はじめに」には、次のような一説がある。

 

◆日常の脚下(あしもと)にこそ

 

心の時代と言われてから、ずいぶん久しくなりました。

飽くなき欲望を少し抑制して、自分の心を見つめ直すことで、

より豊かな心と、生活の充実感を求めようとする人が

ふえているようです。

・・・(中略)・・・

よく足許(あしもと)を見つめよ、といわれますが、

私たちが立っている日常の脚下にこそ、

実は本当の幸せと生命の力がひそんでいるといえるでしょう。

幕末の歌人の橘 曙覧もそう考えて生きた人でした。

曙覧は、越前福井の人でしたが、家業を棄てて、歌人の道を選びました。

妻子をかかえた生活は当然、苦しいものがありましたが、

歌道の志を変えることはありませんでした。

貧困であっても曙覧は、自分の心を見つめつづけ、

そこに生じる”感動”を生きる力としたのです。

・・・(以下略)。

 

◆たのしみは・・・

 

この『独楽吟』と題された52首のすべてが「たのしみは~」で始まる。

特に私のお気に入りの3首をご紹介しよう。

  

「たのしみは 朝おきいでて 昨日まで 無かりし花の 咲ける見る時」

「たのしみは くさのいほりの 莚(むしろ)敷き ひとりこころを 静めをるとき」

「たのしみは すびつのもとに うち倒れ ゆり起こすも 知らで寝し時」

 

◆自分の心と向き合ってみる

 

この本の「おわりに」の一節には、次のようにある。

「辛く、苦しいことがあっても、それにめげることなく、

自分の身のまわりに目を向けて、それを心から楽しむことは、

新たな自己発見を促し、明日への活力を導き出してくれます。」

 

秋の夜長、あなたにとっての豊かな生き方を見つめ直す契機にしてみませんか

一覧へ戻る