コラム『DMP徒然草』 書籍情報のご案内
DMP徒然草

No.81【効果のあがる人の育て方(その1)〜人はどんな動機で学び、習得するのか?〜】

2021.02.03

 

◆2月10日のセミナーに向けて

【トヨタの事例に学ぶ、変革を起こせる人材育成】のテーマで担当させて頂く。

このため、これまでの体験から、人材育成で成果をあげている企業事例を振り返り、

共通する原理原則や体系などを再整理している。

30余年もしていれば、自ずから、成功事例・失敗事例には、共通の本質的な要素が

あることが見えてくる。

 

◆よく聞く経営者や教育担当者、親の愚痴

 

「教育・研修の機会は、結構設けているんだけど、なかなか人が育たない。」

「研修後のレポートは、いいこと書いてあるんだけど、実践になると、

 学んだことが活かされていなくて・・・。」

「上司もよく指導してくれているのに、本人はちっとも。。。」

 

子供が学生の親御さんからは、

「宿題もちゃんとやるように毎日言って、塾にも行かせているんだけど、成績が伸びなくて・・・。」

 

 

◆「勉強しろ!」とよく言う親の子供で、勉強好きの子供を見たことがない!

 

学生のころから塾の経営に参画する感覚でお手伝いしていたから、教育の仕事に携わって約40年になる。

上記の、「親が勉強しろ・・・」は、企業人教育の体験的でも間違いなく言えると思っている。

 

その理由は簡単である。

人は、「強制されること=やらされ感」では、行うこと、学ぶことは苦痛にしか感じない。

楽しくないことは継続しないし、人は本気で学び身につけようとしない。

からである。

 

 

◆自分の学生時代を振り返ると

 

総じて振り返ると、勉強は好きで得意な方だった。

しかし、小学校1・2年は、ガキ大将で、遊んでばかり。勉強なんてほとんどしなかった。

家に帰ったら、カバンをほっぽり出して、野球をしたり、穴を掘って泥まみれになりながら基地を作ったり・・・。成績も中ぐらいだったと思う。

 

小学生2年生の終わり頃、両親が、激しい夫婦喧嘩をして離婚をしかねない事態になった。

共働きで働き、家事もこなし、我々兄弟の面倒をみてくれる母親と、

「飲む・打つ・買う」を地で行く父親では、私が母の味方になるのは当然の成り行き。

 

当時、家は裕福でなく、服はおおよそ兄貴のお下がり、冬場のセーターの袖はいつも青鼻で汚れていて、

見た目もイケメンとは程遠い顔。そして、短気でがさつ、女子にはスカートめくりを毎日・・・。

お金持ちでかっこ良く、いつもおしゃれな服のGくんが羨ましかった。

 

女の子にもモテるはずもなく、先生の評価も「早矢仕くんは、いたずらっ子で・・・」。

 

しかし、この離婚危機をきっかけに、私は、思った。(大人になってから気づいたいのだが・・・)

「これ以上、お母さんに辛い思いをさせちゃいけない。学校のことでは、心配をかけないようにしよう!」

 

宿題も真面目にやり、授業でも手をあげて発言し、学級委員に立候補し・・・と。

そこからは、本来、「ワガママ・横着・自由人」のマサカツ君は、「いい子の仮面」をかぶって

演じるように、人生脚本を変えていった。

 

勉強ができて、いい子になったら、

・お母さんが自分のことで心配しないで済む。安心する。喜び、ほめてくれる。

・女の子にモテるかも?

・遊び回っていても先生から文句を言われない。

・クラスの中での発言権が増し、注目される。

・・・など

 

つまりは、勉強を頑張りだしたのは、単純に自分の承認欲求(特に女子にモテたい!)っていう動機からであった。

 

 

◆「強制されること」からは、自らやろうという「自主的な行動」はまず生まれない

 

脳は、「自分の選択で行動し、達成すること」に快感を得る。

スポーツも、勉強も、遊びも、男性が女性をナンパすることも・・・。

 

例えば、どんなにゴルフが好きな人でも、プロゴルファーじゃなかったら、

「毎日ラウンドしないといけない。これは、あなたの義務だ。」

となったら、おそらく1ヶ月もしたら、コースに行くのがしんどく、嫌になるだろう。

人は、自分の自由意志で行った時に、気分がいいのだ。

大災害時、ボランティアに行って過酷な作業をお手伝いしながらでも、喜びを感じるのは、

自分の意志で決定し、しかも誰かに喜ばれる、「自他からの承認」につながる行動だからである。

 

 

◆「魚の釣り方」より、「釣りをしたい・楽しい」と体感させる

 

冒頭の社長や教育担当者、親の愚痴も、

本人が学ぶ目的も動機も十分持っていないのに、「魚の釣り方」を教えようとするからだ。

 

「自分で釣った天然の鯛で一杯やるのは応えられない!」

「食べなくても、数日前から、潮目を読み、仕掛けを考え、ポイントを選ぶ。

 難しいタイミングであわせ、釣り上げた時の快感はたまらない!」

と、カラダで達成感を味わうから、また釣りたくなる。

 

釣るための道具や仕掛け、竿の操作なども熱心に研究し、学ぶのだ。

企業の教育研修を効果的にするのも同様である。

 

・あなたはなんのために今回の研修に参加するのか?

・今回、あなたが学ぶことによって得られるものは?

・ここで学ぶことを本当に身につけたいと思っているか?

・学ぶことによって、あなたの仕事や人生がどう良くなるのか?

 

こんなことを考えさせないまま、受講させても、効果は出ない。

 

 

◆学んだ先に何があるのか?

 

仕事や人生が良くなるイメージがなければ、所詮、受け身、義務の教育・研修

あるいは、OJTになってしまう。

従って、「上司や担当者がかけた時間や手間」と「相手の成長」は、全く比例しないことになる。

脳は快感を追求するから、頑張った先に、得すること、希望がないと、フルに働かないのだ。

 

日常の生活でも同様。

辛いことでも努力したその先にワクワクすることがあると頑張れる。

逆に、辛い日々の先に何があるのかがわからず、希望が持てないと、鬱っぽい気分になり、行動したくなくなる。

 

 

◆まして今の若い世代は・・・

 

豊かな時代に育ち、欲しいもの、手に入れたいものがはっきりしていない人も多い。

取り組む、努力することの、コスト対効果(コスパ)を考えて行動する傾向が強い。

昭和時代のように、学び、がんばったら、家電が買える、車が買える、自宅を建てられるのような物質的に豊かになることが、頑張る目的になりにくい。

 

従って、以前より、今の世代の人の方が、学びの動機づけは、かなり難しい。

 

しかし、私の実感からすると、彼らにも必ず「自己成長の欲求」はある。

人によって欲求の具体的内容は様々だが、「自己成長の欲求」は脳が持っている本能に近い欲求だからだ。

上司や先輩が、学びと成長の欲求につながる「やる気スイッチ」をうまく発見できていないケースが多いと感じている。

 

 

◆相手の「学びたい」「向上したい」心に火をつける

 

20世紀アメリカの哲学者であり教育者であったウイリアム・ウオードは言っている。

「平凡な教師は言って聞かせる。よい教師は説明する。優秀な教師はやってみせる。

しかし、

 最高の教師は、子どもの心に火をつける。」

 

こんな研修担当者・上司は、自主的に学び、成長軌道にのる部下を育てることができる。

 

 

◆やっぱり、「子は親の後ろ姿を見て育つ」法則。

 

そのためには、教える側、上司や親が「学ぶことは楽しい。学んできたおかげで、こうなれた」との姿を見せ続けることが必要条件。

学び続けると「あんな人になれるんだ」との憧れや尊敬が、最初の学びの導火線に火をつける。

 

 

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