コラム『DMP徒然草』 書籍情報のご案内
DMP徒然草

No.76【 理念・信条を持って今を生きる・働く 】

2020.12.23

◆愛知製鋼さんの研修にて

 

12月の第1週、第2週と年内最後の宿泊研修、2クラスを担当させて頂いた。

 

愛知製鋼さん( https://www.aichi-steel.co.jp/ )の作業長候補の皆さんの

2泊3日の「リーダーシップ強化研修」。

 

「変革&現場力強化」を目指して、各現場からモノづくりの第一線のリーダーとして、選抜されたメンバーが受講者である。

 

上は50歳、下は32歳(うち女性が1名)。今後の活躍が期待される作業長候補。

 

トヨタを始め、幾多の製造現場を見てきて、

「上位方針に基づいて、安全・品質・生産・原価などの今期の目標達成の成果を

あげている」現場には、関係する人々を巻き込む「対人影響力」の高いリーダーが必ずいる。

 

現場の成果は、リーダーのありようで決まると言っても過言ではない。

今回の研修もそのリーダーシップを強化してもらうのが狙いであった、

 

◆初日~第2日目の気づき

 

選抜メンバーだけあって、取り組む姿勢は開始から、熱心で真面目なものだった。各自が現場で活躍している人だというのが伝わってくる。

 

初日と2日目は、

基本を自ら行えているか?」

  →「知っている」でなく、「やれている。更に習慣化できている」か?

 

「部下に言っていることを自らも行えているか?」

=「自分の後ろ姿は率先垂範のリーダーとしてどうなのか?」

 

→『「子は親の後ろ姿を見て育つ」原則』に従い自分を振り返ってみる

   (部下は上司の後ろ姿を見て育つ)

を研修の柱に進行した。

 

選抜メンバーだけに、皆さん、頭では必要性もどうしたら良いかも、

よくわかっている。

 

3S、ホウレンソウ、自ら挑戦すること、納期を守ること、

目的達成のためのコミュニケーション・チームワーク etc・・・。

 

しかし、体験学習方式の研修が進むにつれ、

知ってはいても、体得レベルの習慣化ができていなかったことが多々あることに気づきが深まっていった。

 

・「知っているけど、やれていない。知行合一になっていない自分」

 

・「後ろ姿で部下に示しきれていない自分」

 

・「上司や部下、職場の環境に責任転嫁して、どこかに逃げ道をつくり、

  本気・本腰になっていなかった自分」

 

・「働くことに慣れ、生きることにも慣れ、生き生きワクワクしないで、

 マンネリズムで過ごしていた自分」

 

そんな弱い自分、リーダーとして甘かった自分に気づき出してからの

皆さんは、すごかった。

 

第2日午後からは、「やらされ感」はほとんどなく、「自ら学び、自ら動く」姿勢が随所に見られるようになった。

 

もともと、現場で鍛えられてきただけに、

「愚直に誠実に取り組む」、「忍耐力」、「人の想いもよく分かる」、そして、「情やユーモアがわかる人間らしい感情」も持っていらっしゃった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

◆我社のDNAを伝承する

 

愛知製鋼さんは、1934年(昭和9年)に(株)豊田自動織機製作所(現(株)豊田自動織機)製鋼部門が作られ、

1940年(昭和15年)に製鋼部門が分離独立して、豊田製鋼株式会社として、

創業した。

 

初代社長は、トヨタ自動車の初代社長 豊田喜一郎、その人。

愛知製鋼さんは、トヨタ自動車と兄弟会社にあたる。

 

自主的に取り組みだした、研修の第2日の夕刻、明朝までの自主課題を出した。

 

『「豊田綱領」を暗記し、明朝(最終日)開始時に、班単位発表すること』

 

◆『豊田綱領』

 

*            一、上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし

*            一、研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし

*            一、華美を戒め、質実剛健たるべし

*            一、温情友愛の精神を発揮し、家庭的美風を作興すべし

*            一、神仏を尊崇し、報恩感謝の生活を為すべし

 

注)「豊田綱領」とは、豊田佐吉の考え方を、豊田利三郎、豊田喜一郎が中心と

   なって整理し、成文化したもの。

   佐吉の5回目の命日にあたる1935年(昭和10年)10月30日に発表された。

   トヨタグループ各社に受け継がれ、全従業員の行動指針としての役割を

   果たしている。(トヨタ自動車HPより)

 

今の時代でも全く古びない。いや今の時代だからこそ、忘れてはならない理念

(価値観)、行動指針であると感じる。

 

◆なぜ「豊田綱領」を暗唱してもらったのか?その理由や狙いは・・・。

 

全体の狙いを端的に言えば、

この中に、強い現場をつくる本質、仕事を通じての社会貢献、やりがいと幸せ、

そして、自分の仕事に誇りを感じるための働く姿勢、それを生み出すのは

人しかないこと・・・重要な理念と信条(価値観)が全て入っていると

考えるからである。

 

さらに、細分化するなら、以下のことを感じ、気づいて頂き、

今後の「現場力強化」に活かして頂きたかったからである。

 

1)「人材こそ経営の要であり、企業の盛衰を決めるのは人材である」

                                        (故:豊田英二 トヨタ自動車名誉顧問)

   の言葉にあるように、人材育成は、我社の未来を創造するための

   リーダーの大事な役割(日常業務)の柱であること

 

 しかし、現実は、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング=日常業務を通じての教育・訓練)とは名ばかりで、現場の多忙な目先の業務に追われ、結果、人材育成が手薄になっている状況を感じたから。

 

2)「企業の人材育成」とは、「先輩から受け継いだ我が社のDNAを発展させ

  後輩(次世代)に伝承する偉大な営み」であり、

  自分の生きた証(あかし)を後輩の中に残すことができる仕事である。

 

  知識やスキルを教えることは、もちろん重要だが、

  しかし、それ以上に「我社の人としてのありよう」がその土台に

  ないと基礎工事がしっかりしない上に家を建てるようなもの。

  したがって、競争力の源泉となる真のDNAの伝承はされないこと。

 

3)恩送りの精神

  今日の自分があるのは、入社以来、育ててくれた「上司や先輩」のおか

  げ。それを次世代に「恩送り」するのは、人として大切なことであり、

  そうして、企業のDNAは人から人へと伝承されていく。

 

4)これを機会に、豊田佐吉、喜一郎はじめ、創業からのトヨタグループの

  偉大なリーダーの思想や哲学に触れる機会にしてほしかったから。

 

5)製品の先にある社会貢献

  愛知製鋼さんは、特殊鋼やステンレス、チタン、鍛造品などが主力  

  製品である。

 

  ただ製品を作るだけでなく、そのモノづくりの先にある

  「安全で快適な、未来の車社会に貢献できる」すばらしい仕事と

  捉え、誇りや自信を持って、働く意識を持って頂きたかった。

 

6)何より、企業のDNA伝承の必要条件は、リーダーの日々の後ろ姿

  の実践であること。

 

  感化力とは、リーダーが「日々何を言うか」でなく、「日々何を  

  するか?」こそが、影響力を決定づける本質であること。

 

  「 ”子は親の後ろ姿を見て育つ” 原則」つまり、

  「後輩に見せる先輩の日々の実践の後ろ姿=働きざま、生きざま」なしには

   影響力など発揮できないこと。

 

◆さすがの最終日

 

 2クラスとも、最終日の発言、行動、なにより身体から出るエネルギーは

 素晴らしいものになった。

 

 「100年に一度の大変革期」と言われる自動車業界。

 彼らなら、それを乗り越え、強い現場力を通じて、愛知製鋼さんの

 次の新たな100年の歴史を創造していってくれると感じた。

 

 そして、今年最後の宿泊研修がこのクラスで良かった!楽しかった!

 と思えるものになった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

◆ゴーギャンの思想

 

今回の研修中に、繰り返し、参加者の皆様に問いかけた発問。

 

「どうなりたいの?」

「人生や仕事で、どんな将来ビジョンを描いているの?」

「人生も仕事も、多くの苦労はあるものの、ワクワクや楽しさを感じられている?」

 

これらの発問の背景には、

フランスの画家ポール・ゴーギャンの

『我々はどこから来たのか  我々は何者か 我々はどこへ行くのか』

がある。

 

この3つのシンプルな問いは、

「自分らしい、心豊かな人生を創造する」ための、

自分の「人生理念」や「信条」に影響を与える、本質的な問いと

小生は考えるからである。

 

リーダーが生き生き働き、良き人生の創造を目指していない後ろ姿では、

良き影響力など発揮できようもない。

 

◆「理念や信条なき人生は虚しいものになる」

 

一般的に、働くことは、生きるための手段。

しかし、「生活する(生きる)ために、働かねばならない(義務)」だけでは、

「人生はワクワクする楽しいもの(権利)」「誇りが持てる充実したもの」には

ならいと私は考える。

 

「ただ一度の人生をより良きものにしよう、との姿勢」は、

「周囲に良き影響力が発揮できるリーダーの重要な条件の一つ」になるからだ。

 

この3つの問いは、ゴーギャンの最も有名な絵画の題名である。

 

 →実際の作品

  https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Paul_Gauguin_-_D%27ou_venons-nous.jpg

 

◇我々はどこから来たのか?

 

 (過去:どんな価値観で如何に生きてきたか?今年1年どんな生き方・働き方をしたか?)  

 

◇我々は何者か?

 

(今:どんな日々の実践ができ、どんな行動習慣を持っているか?)

 

◇我々はどこへ行くのか?

 

(未来:将来のビジョン・来年の目標に向かって生きるのか?)

 

◆ガンジーもまた

 

インド独立の父と呼ばれるマハトマ・ガンジーは

『未来は、「今、我々が何を為すか」にかかっている。』

と言っている。

 

『目的を見つけよ。手段は後からついてくる。』

とも。

 

「今、我々が何を為すか」は、どんな思想・哲学・ビジョンを持つか?

によって決まってくる。

 

「今日、如何に生きるか?何を為すか」が、あなたの「未来を創る」。

 

◆行く年・来る年のこの時期に

 

年末年始、日常の仕事モードを離れ、

「私の今年1年の生き方の反省」、「来たる新年に向かってのビジョンと為すべきこと」

をゆっくり、じっくり己に自問しようと思っている。

 

コロナ禍の今だからこそ、生き方、働き方、家族との関係を見直す

チャンス!

 

皆様もそんな時間と空間を持たれたらどうでしょうか?

 

今年も徒然草をお読み下さり、有難うございました。

有終の美を飾り、よき越年をされますことをお祈りしております。

一覧へ戻る