No.45【ふたつ よいこと さてないものよ】
2019.06.26
臨床心理学者の河合隼雄(カワイ ハヤオ)さんの著書、
『こころの処方箋』(新潮文庫)の一節から。
この本の中には、長年、様々な人生に向きあい、
人を見つめてきた河合さんだからこその珠玉の言葉が数多く登場する。
河合さんが、人間の心に関する「法則」として、気に入っているのが、
この「ふたつ よいこと さてないものよ」と思ってみること、だそうだ。
◆一つよいことがあると、一つ悪いことがあるとも、考えられる。
よいことずくめを望むから、足らざる事の愚痴や文句が多くなる。
人間の世は、よいことずくめには、できていないとわかっておくこと。
そうすると、無用の腹立ちをしなくて済んだり、
全体の状況がよく見えるようになる。
◆この言葉は、「ふたつ悪いことも さて ないものよ」と
言っていることにもなる。
悪いこと、嫌なことがあった時、よく目をこらして見ると、
それに見合う「よいこと」が存在していることが多い。
「禍福は、あざなえる縄のごとし」、「塞翁(サイオウ)が馬」の教えにも、
通じる考え方でしょう。
◆「ふたつ よいこと さてないものよ」とわかってくると、
何かよいことがあった時、それとバランスする「悪い」ことの存在が
前もって見えてくる事が多い。
さらに、それを受ける覚悟を持つことができる
そのことにより、難を軽くしたり、上手に対応できたりする。
と、その効果を述べている。
順境の時に、有頂天にならず、逆境の時でも、悲観的になりすぎない、
人生の智恵と言っても、いい言葉ではないでしょうか?