No.34【桜を愛(め)で、己をみつめる】
2019.03.27
◆「さまざまのこと おもいだす 桜かな」
(芭蕉)
日本人にとって、桜は古より、特別の花。
その時代に生きた人が、桜の花から様々な想いを持ち、
人生を考え、生きてきた、そんな花。
皆様にも、桜にまつわる人生の様々な思い出がおありではないだろうか。
今年も桜が咲き、そして散っていく。
この時期に何を想うか・・・。
◆「宿かさぬ 人のつらさを なさけにて 朧月夜の 花の下ぶ(臥)し」
(蓮月尼)
蓮月尼(れんげつに)は、明治初年まで生きた、浄土宗の歌人。
春の夕暮れ、行き暮れて、泊まる先もなく、
ある家に一晩の宿を求めたが断られ、しかたなく桜の木の下で、眠ることに。
ところが、春の宵の朧月夜のなんとも言えぬ風情に接して、
泊めてくれなかった人をうらめしく思ったが、
そのお陰でこんな夜を迎えられると感謝する。
そんな歌。
忙しさの中で、自然を愛(め)でる心の余裕を失ったり、
今あることの感謝の気持ちを忘れ、あれこれ求めすぎたり・・・
そんなことのないように、暮らしていきたいものだ。
◆「願はくは 桜の下にて 春死なむ そのきさらぎの 望月のころ」
(西行)
「そのきさらぎの 望月のころ」とは、
現在の3月中旬以降の満月のあたり、との意味。
西行は、自ら望んだわずか1日遅れで亡くなったと言う。
武士として生まれながら、若くして出家し、全国を放浪しながら、
多くの和歌を詠み、松尾芭蕉はじめ、後世にも大きな影響を与えた西行。
桜を愛でながら、波乱万丈の人生最後に何を想ったか・・・。
桜の季節に、人生の最期を迎える。
いいな~、と思う。
◆「あれを見よ 深山の桜さきにけり まごころつくせ 人しらずとも」
(詠み人知らず)
新入社員研修では、必ず参加者にお伝えする歌。
良き仕事や人生にするために、日々こんな姿勢で生きることかな?
と思う。