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DMP徒然草

No.139【 成長を促せるリーダーのコミュニケーション 】

2022.07.06

◆社長が社員へのメッセージを発する場面で

 

社長や上司の方が社員に「気づきや成長を促す言葉」をかける場面を仕事柄目にする機会が多い。

4泊5日の訓練時の第4日の激励の場面、社内研修での社長からの挨拶の場面など・・・。

その様子を見ていて、日頃のリーダーの指導パターンが如実にでる、と感じている。

それは、おおよそ、次のようなパターンである。

1)指導のいいチャンスとばかり、「教えようとする人」(しかも上から目線のことが多い)

2)既にがんばっていることを十分認めないまま「あなたはもっとできる、頑張れ」と結果、要求になるメッセージを発するケース

3)その時の社員の心情に寄り添わないで、自分中心の話で、おまけに説教っぽい話になる人

4)感謝やねぎらいの言葉をかけ、自分の至らなさのお詫びも伝え「力を貸してくださいね」という人

5)「あなたが我社にいてくれてうれしい、一緒にやろう」というメッセージを発する人

など。

 

こうしたリーダーのコミュニケーションと「人が育ちやすい組織か?」は明らかに相関があると、長年の体験から確信する。

 

 

◆教えすぎるから受け取らない、説教っぽい話をするから育たない

 

上記の事例でいうと 1)2)3)のケースは、人が育ちにくい。

話の主体(主語)が「私」(リーダー側)にあり、自分都合のメッセージでは、社員の心に共感を呼

ばず、浸透していかないからだ。

 

4)5)のメッセージは、主体(主語)が「あなた」または、「あなたと私」にあり、共感を感じさせ、心に浸透し、波動を起こす。

従って、いい人材が育ちやすくなる。

 

人を育てられないリーダーは、自分が主語になり過ぎていて、このことがわかっていない。

 

人が自ら成長しようとする時は、

・自ら反省し、気づき、行動を改めよう、もっと進化させようと決意する時

・この人のようになりたいと、尊敬や憧れを持たせるリーダーの人間性に触れた時

・「これを達成する」「こんな自分になる」と自ら心に決めた時

などである。

 

つまり、自分からの「内発的動機づけ」がないと、成長のエンジンは続かない。

私主体の一方通行の指導、圧迫的な「外的動機づけ」は一時的には効果がありそうだが、続かない。

 

人が育っている企業のリーダーは、説教臭い話はほとんどしない。圧迫する雰囲気もださない。

【*先の事例の1)〜3)のケース】

 

「人の心がどんな時に動くのか?」がわかっているからである。

 

 

◆「話す」と「語る」

 

「語る」とは、「五口で吾をいう」と書く。

「話す」は、「千口で舌(先)で言う」と書く。

 

「語る」は、「私はこうしてきた。こう考える。あなたはどうする?」とのニュアンスがある。

祈るように、願うように、自分の想いを伝える心を感じる。

 

「話す」は、「私のことを軽い言葉をペラペラと」とのニュアンスがある。

論語にいう「巧言令色鮮し仁」(こうげん れいしょく すくなし じん)である。

*「巧みな言葉を用い、表情をとりつくろって人に気に入られようとする者には、仁の心(注:人への思いやり)が欠けている」との意味。

 

あなたの話は、主語が「私」であることが多くなっていないだろうか?「あなた」になっていることが多いだろうか?

あなたは、部下に「語っているだろうか?」「話しているだろうか?」

 

その違いが相手の心を成長へと促すコミュニケーションの差で表れる。

話の主体を「私」から「あなた」に変えてみる。

「成長を促せるリーダー」へとあなた自身が成長できる。

 

以上

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