No.14【改革を実行できるリーダーとは?~変革を起こせるリーダーのあり方(その2)~】
2018.10.31
前回、AIによる社会、及び人の働き方の変化について述べた。
これらが100年に一度の大変革期と言われる大きな要因の一つ。
「変化に対応できない人と企業は衰退、滅亡する」
この冷厳な真理の前に、多くの企業で変革が求められる時代が到来している。
そこで、今回は「改革を実行できるリーダー」について述べてみる。
◆T社の大改革
リーマンショックの後、トヨタ系ティア1の製造業T社は大幅な赤字に転落、
会社の生き残りをかけた大改革に挑戦をし、見事に成果をあげた。
改革を先導したのは、当時のK社長。
「賢者は歴史に学ぶ」の教えに従い、江戸期の変革の事例を参考にされた。
以下は、K社長の会社改革の記録資料からの抜粋である。
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◆幕府改革(享保 ・田沼意次 ・ 松平定信)が失敗したのは何故か?
次の要因があげられる。
① 改革の目的や方法が不明確であり、庶民はもとより幕府要人にすら
趣旨を説明 ・徹底 していなかった。
② 改革の推進者は一部の幕府エリート官僚に限られており、実務者には
意見も聞かず、指示・命令として一方的に押し付けていた。
③ 改革に必要な庶民の協力や世論喚起に向けたPRに欠けていた。
④ 改革の根本に「 優しさ・思いやり」がなく、逆に増税した。
◆改革に成功した上杉鷹山に学ぶ
筆者注)上杉鷹山は、江戸中期、出羽の国、米沢藩の藩主。
領地返上寸前まで困窮した米沢藩再生のきっかけを作り、
江戸時代屈指の名君として知られている。
鷹山の教えに「改革を妨げる3つの壁」がある。
1)制度の壁
2)物理的な壁
3)心(意識)の壁
→改革とは、この3つの壁 を 「壊す」 ことであり、
特に壊さなければならないのは 「 心の壁 」と言われている。
◆では、改革に必要な5つの心得とは?
(・・・以下の部分は当時のT社の現状。
→以下の部分は、幹部に強調して説明した方針の骨子)
① 情報は総て共有する
・・・・改革が進まない組織は、必要な情報を社員に知らせていない
→ 情報公開の徹底 : 場を多くし、分かり易く繰り返し説明
② 職場での討論を活発にする
・・・・ 一方的な押し付けはダメ
→ 傾聴の姿勢:意見を言わせ、当事者意識を持たせる
③その合意を尊重する
・・・・途中で揺らぐのはダメ
→ 筋(芯)を通す:言行一致(約束は守る・言った事は必ずやる)
④ 現場を重視する
・・・・報告(紙)に頼り、実態を知らないのはダメ
→ 現地・現物に徹する:関心を持ち、実務者と直のコミュニケーション
⑤ 愛と信頼の念を流布する
・・・・夢&希望がないと動かない
→嬉しさを語る:具体的にどんな良いことが有るのか?
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◆あなたの会社の現状は?
人は「変わらなくては」と口では言うものの、本音では変わることに恐怖心を持ち、
抵抗するもの。
小生の体験からも多くの変革のケースの一番の抵抗勢力は、社外でなく、社員の心の中にあった。
「現状維持を良しとする。今までのやり方の何が悪い」
「困難で面倒な挑戦はごめんだ」「自分の保身や既得権益にしがみつきたい」などの
変えたくないという心の壁こそ、一番の抵抗勢力である。
これまで、いくつもの企業変革の事例を体験してきたが、変革できる組織には、
必ず使命感と執念を持って、粘り強くやり続ける「肚をくくったトップリーダー」と
それを補佐する「共に立ち上がり、戦うリーダー達」がいた。
「経営革新は、組織革新より、
組織革新は、自己革新より
自己革新は意識革新より始まる」
(『DMP実践の心得』より)