コラム『DMP徒然草』 書籍情報のご案内
DMP徒然草

No.95【治に居て乱を忘れず〜リスクマネジメントができないリーダーの組織は危うい〜】

2021.06.02

「どろなわ(泥縄)」。

 

コロナワクチンの接種に対する政府の対応を見ていて、まさに「どろなわ」とはこのことだと思う。

この国のトップリーダーの危機対応のありように情けない気持ちなる。

 

日本のワクチン接種のスピードは世界113位。先進7カ国の中では最低。

発展途上国と言われるインドやベトナムなど東南アジア諸国よりも遥かに遅い。

 

ワクチン接種率の世界トップクラスは、イスラエル・英国・ブータンなどである。

 

ブータン王国は、昨年2月、日本ではクルーズ船云々の対応をしている頃、海外からの帰国者に罹患した人が一人発見されるや、ワンチュク国王の指示で、翌日から即、外国人の入国禁止、海外からの帰国者には3週間の隔離措置をとった。(日本はその後数ヶ月してから2週間の隔離措置)

 

◆危機の時のトップのリーダーシップ

 

こうした国難にあたる危機(最たるものが戦争)が起こった時に、トップリーダーの変化対応力の本質があぶりだされる。

 

コロナ禍は、いわば、コロナウイルスというゲリラに各地で爆弾テロをしかけられているようなもの。つまり、コロナウイルスとの戦争のようなものである。

そんな非常事態なのに、日本のトップリーダーは、事前準備、状況判断、決断がなんと遅いことか・・!

 

先にあげた、ワクチン接種スピードが早かったイスラエル・英国は、他国との戦争に勝利してきた歴史が多い。

 

イスラエルについては、中東戦争はじめ相手国の軍事基地や兵站線を先制攻撃で一気に潰し、戦闘力を奪ってしまう戦い方をしてきた。

 

英国は、1982年のフォークランド紛争の時、サッチャー首相の決断の下、軍事行動の速さで数日のうちに紛争地を制圧し、結果、3ヶ月の短期間にアルゼンチンに完全勝利で決着した。

 

*筆者は、戦争否定論者である。しかし、平和を維持するためには、相手国に脅威をもたせ、攻撃させないような軍事力と強いリーダーシップは、国民の生命財産を守るためには必要と考えている。

 

 

  • 「治に居て乱を忘れず」

 

『易経・繁辞伝』に孔子の言葉として、

 

「是の故に君子は安くして危うきを忘れず、治にして乱を忘れず」

 

(君子は安全だと思っても危険ではないかと用心し、平和であっても乱れるのではないかと用心する)の意味とあるのが出典である。

 

平時の状態の時に、緊急事態が起こった時のリスクマネジメントが機能する組織と仕組みをつくっておくのは、トップの重要な役割の一つである。

 

このことは、会社経営でも全く同様。

 

好調な時でも、不況に備える準備を怠らない。

大災害が起こった時を想定して、平時から、社員やお客様の安全の確保、短期間で復旧できる備えを怠ってはならない。

 

今回のワクチン接種、短期間に1億人弱の国民に接種しようとしたら、

ワクチンの保管や物流、大規模会場での接種が必要なことなど、想定できたこと。

なのに、今になって大規模会場の設置やそこでの運用の仕方を検討する、民間病院に協力要請をする。

歯科医師、薬剤師、医学研修生、検査技師などにも接種に協力(注射をしてもらうことができないか)調整している。

 

いずれも以前から想定できたことばかりである。

 

私が責任者なら、ワクチン確保ができた段階で、トヨタ自動車など物流と仕組みに強さを持っている企業に依頼して、物流から、最も効率的なワクチン接種の会場での運営方法の標準化をしてもらい、それをパッケージで各行政に展開しただろう。

 

「3.11」の時、原発対応を始め、政府の対処が後手後手になり、危機体制が弱いことは明らかになったのに。

 

「治に居て乱を忘れる」平和ボケとしかいいようがない。

 

今の日本が国際紛争に巻き込まれたら、明らかに負ける。すなわち、国土・国民を守るという政治の最も本質的な目的を果たすことはできないだろう。

 

 

◆あなたの会社や職場は?

 

「治に居て乱を忘れず」の体制になっているだろうか?

 

・南海トラフが起こった時の危機管理体制は?

 

・コロナ禍がきっかけで、大不況時代が長く続いても持ちこたえられる経営体制(特に財務)になっているだろうか?

 

・緊急時に、即断即決できるリーダーの存在、組織体制や人材育成ができているだろうか?

 

政府のありようを非難するだけでなく、他山の石にして見直してみては如何だろう。

 

以上

一覧へ戻る