No.111【 ネルケ禅僧の教え 】
2021.10.27
◆ドイツ出身のネルケ禅師
兵庫県の山奥にある曹洞宗 安泰寺。(https://antaiji.org/ja/)
雲水(修行者)は、自給自足の暮らしの中、年間1800時間坐禅を組む。
冒頭の番組は、ここで18年間、堂頭(住職)を務めたネルケ無方(むほう) 氏にインタビューをしたものだった。
彼はドイツ出身、祖父が牧師の厳格なクリスチャンの家に生まれた。7歳で母を亡くしたのをきっかけに、「自分は何者か?なんのために生きるのか?」を考え始める。
キリスト教はじめ、様々な哲学を勉強し、自問してもそれがわからず、若くして自殺まで考えた時期もあったという。
高校生の時、坐禅と出会い、気づいたのが身体を通じての実感や気づき。
22歳でドイツの大学を休学して、京都大学に留学。その後、京都のお寺で修行した後、安泰寺で修行。2002年から2020年まで安泰寺で堂頭(住職)を務める。現在は、その体験を活かして、執筆や講演など幅広く活躍されている。
◆【ネルケさんの教え(その1):弟子のタイプ】
ネルケ禅師は、海外人材を始め、この寺で修行した多くの弟子を育て、世に送り出してきた。そんな彼が弟子の育成について語っている。タイプ(個性)にあわせた育成の仕方が重要と言う。
【トマト系の弟子】
トマトは、支えがないと倒れる。雨でくさる。乾燥した土地の方が美味しく育つ。
上司のサポートが必要。しかし、慈雨(世話をやく、優しくし過ぎる)を与え過ぎると根腐れする。
【かぼちゃ系の弟子】
どんどんツルが横に伸びて俺がオレがと主張する。放っておくと他の野菜を駆逐してしまう。
個人プレーは優れているが「俺が、オレが」でチームには害になる人材。
【キュウリ系の弟子】
一本のつるで育つ。お釈迦の教えがあれば、自分で伸びていく。
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◆【ネルケさんの教え(その2):坐禅とは、何か?幸せとは何か?】
ネルケさん曰く。
禅とは、ゲームから降りること。
ゲームとは、他人との競い合い、勝ち負け、他者評価や世間体を基準にした生き方のこと。
幸せになるには?
「幸せを求めないこと。それを求めるから不幸になる」
なぜなら、「求める」から、それが得られないことが、悩みや苦しみを生む。
例えれば、いつも晴れる日を願うから、曇りや雨の日が楽しくない、気分が重くなる。
雨も曇りも、人生の1ページ。そんな日(思い通りにならない)があるから、晴れる日が楽しいと思える。
「幸せを求める心」、「自分が・・・私が・・・」の「我(我執)」を手放し、手放し続ける。「あるがままに感謝できる」。その時、人は幸せの中を生きている。
とネルケ禅師。
インタビュアーが最後に聞いた。
「この道に入るきっかけになった『人はなんのために生きるのか?』の問いに対して、今はどう考えていますか?」
「長年考え続けても結局わからなかったです。今はこう思っています。
それは考えても仕方がないこと。とにかく、“今日”を、“今”を精一杯生きる。頂いた命をまっとうする。それが生きること。」
以上